【知っ得情報】失火責任法ってご存じですか?

■糸魚川の大火

2016年12月に新潟県糸魚川市で、大規模火災が発生しました。市内の中華料理店から出火(原因は店主が鍋に火をかけたまま外出したためと思われます。)し、広範囲に延焼した結果、被害家屋は144棟、うち83%が全焼。被害総額は30億円以上と言われています。被害に遭った方々におかれましては、心よりお見舞い申し上げます。

■被害の補償は誰かしてくれるの?

被災者にとっては、まさに降って湧いたような災難ですが、当然誰かが賠償してくれるだろう・・・・と思いますよね。それでは、このような類焼被害に遭った場合、誰かが賠償してくれるのでしょうか?

以下、一般論になりますが、火元から延焼して自分の家も焼失してしまったケースを事例にご説明します。

■誰も賠償してくれない!失火責任法とは?

誰かに自分のものを壊されたり、ケガをさせられたりしたら、当然弁償してもらえますね。ところが、火災で被害に遭った場合は、事情が違ってきます。ちょっと難しい法律の話ですが・・・

まず民法第709条:「故意または過失によって他人の権利を侵害したるものはこれによって生じたる損害を賠償する責めに任ず。」わかり易く言うと「人のものを壊したり、人にケガをさせたら弁償しなければならない。」と定めた法律です。当たり前ですよね。

ところがこの民法709条の規定は、「失火の場合にはこれを適用せず。」となっているのです。つまり、火災で近隣に延焼してしまったとしても、出火元は賠償をしなくてもいいという決まりです。

この法律を「失火の責任に関する法律」と言います。(略して「出火責任法」「出火法」とも言います)

※(注1)「故意」と「重過失」の場合は例外です。後述 <ご参考>をご覧ください。

日本には古来木造住宅が多く、火災が発生すると広範囲に延焼し被害が甚大になってしまうため、出火元に過大な責任が及ばないよう、明治32年にできた法律です。(とても昔にできました。)

この法律により、隣の家から出火し、自宅に燃え移ったとしても、出火の原因が「故意」や「重過失」でない限り、出火元からは賠償してもらえないのです。

(燃えずに煙による被害や消火のための大量の放水による被害を受けた場合も同じです。)

■「自分の家は自分で守る」 これが基本です

出火元からの賠償してもらえないとなると、我々はどうすればいいのでしょうか?

極めて基本的なことですが「火災保険」に加入し「自分の家は自分で守る」しかありません。「備え有れば憂い無し」日頃からまさかの事態に備えて準備しておきましょう。

私達は皆様の準備のお手伝いをさせていただきますので、遠慮なくご相談ください。

※(注2)今回の事例は、火元の軽過失により発生した延焼のケースのお話でしたが、その他、重過失に問われたケースや業務中に発生したケース、賃貸物件の大家さんに対する賠償など、今回の内容とは異なるケースもあります。詳しくは、弊社までお問い合わせください。

<ご参考 その1>

■「失火責任法」が適用されないケース(賠償責任が発生するケース)

出火の原因が次の場合は出火元は賠償責任を負います。

①「故意」の場合 →「故意は」「失火」ではないので「失火責任法」の適用外です。

②「重過失」の場合 

◆重過失とは?

わずかな注意を払っていれば予見・防止できるのに、漫然と見過ごしたことを言います。

過去の裁判で「重過失」と認められた事例

・寝たばこ

・石油ストーブの火を消さずに給油したところ、こぼれた石油に引火した

・電気コンロをつけたまま就寝したため、毛布に引火

・天ぷらを揚げている間に、火をかけたまま長時間はなれた  など

<ご参考 その2>

■国や県の補償(糸魚川火災の場合)

糸魚川火災では、強風により瞬時に広範囲に亘り延焼したことから自然災害と認定され、「被災者生活再建支援法」と「災害援助法」が適用されることになりました。

〇支援内容

「被災者生活再建支援法」により

・全焼になった家1軒につき 合計400万円(国から300万 県から100万円)

「災害援助法」により

・住民に下記の仮すまいを用意

世帯人数3名以下上限6万円、4名以上の世帯7万円限度に、民間の賃貸物件を行政が借り上げ、被災者に提供

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